岐阜獄中記 ~アキバから岐阜へ~

アキバを離れ、陸の孤島「岐阜」に収監(就職)されたオタクの話

トレンドを追うか、過去の名作を追うか?

トレンドを追うか?過去の名作を追うか?これはオタクの生き方を問う命題である。

 

 私はアニメオタクであると自認している。これは社会人になり初めて自認できたことだ。それ以前はアニメファンとしてオタクになり切れない程度の趣味だと思っていた。

 中学時代はたくさんテレビアニメを見ていた自信があったが、その自信は高専入学後にすぐに打ち破られた。高専の学友は私とは視聴時間が倍以上違っていた。どうして同じ人生時間を過ごしてきて、ここまで視聴作品数に差が生まれているのか?誇張無しで100作品以上の差が生まれていた。自分が見てきた作品が世に出回る一部なのだと、体感した瞬間であった。

 もちろん、見てきた作品数の多い・少ないがオタクを名乗る基準では無い。コンテンツに賭ける想い・熱量がオタクの基準だと今の私は思う。しかし、学生時代はとにかく知識量(=作品数)が重要だと感じていた。学友のアニメオタクは幼少期からAT-Xニコニコ動画などを利用して英才教育を施されたバケモノ共であった。そんなバケモノ共に負けないように高専時代はひたすら作品を視聴しまくった。年100作品以上視聴し、今期作品のみではなく、過去の名作も追って研鑽を続けた。どれだけ研鑽を続けてもバケモノ共の知識量には追い付かず、アニメファンのまま卒業を迎えた。

 

 そして社会人になり投獄後、何人かのアニメオタクを名乗る人物にであった。

私は彼らに尋ねた「今期のアニメは何を見ていますか?」と、すると彼らは「今期のアニメは見ていません」と答えた。は?お前はアニメオタクを自称しているのに何故今期のアニメを見ていないのか?それもひとり、ふたりではなく社会人になって出会った半数の自称アニメオタクに同じ回答をされた。社会人になりたての頃は彼らのあまりの意識の低さに驚き、温度差を感じていた。彼らは過去の名作ばかりを語り、トレンドには無関心だった。私からすればそれは「○○作品オタク(ファン)」であって、「アニメオタク」では無かった。そんなに気安くオタクを自称できるほど安い肩書ではない。

オタクの肩書はあのバケモノ共にふさわしい肩書であり、年間100作品どころか、人生で100作品も見たことのないヤツがオタクを自称していることが許せなかった。

比較対象が「バケモノ」から「もどき」に変わったことで私が世間的には「バケモノ」側の人間であることを初めて認識し、自分がアニメオタクであること実感した。

 

 社会人4年目を迎える今ではそんな過激な思想も薄れつつある。

社会人はとにかく忙しいのだ。学生ほど暇じゃない。平日は仕事に追われて、休日も家事や社会人の付き合いに時間を奪われる。独身ならまだしも結婚して子供も生まれればもっと自分の時間は短い。独身の私でさえもう年100作品は追えていない。動画コンテンツの普及によりTV地上波以外にもアニメ新作が増え続け、トレンドを追うのも厳しい状況である。00年代・10年代と違い、20年代はかつてないほど作品数は増えトレンドを追うのには体力・時間を消費する。最前線の環境についていく難しさを理解し、オタクもどきが生まれる理由が分かった。まして、トレンドを追いながら過去の名作を見れる余裕はなく限られた時間でやりくりするしかなかった。

 

さて、オタクらしく回りくどくなったが、最初の問いに戻る。

「アニメオタクとして」トレンドを追うか、過去の名作を追うか?

自分の研究方針をどちらにするか?理想は両方だが時間は有限なので絞るしかない。

肩書のためにこの命題を問いているのではない。もちろん、アニメが好きだから作品を見るのだ。トレンドを追うのは疲れる。鮮度があるからだ。鮮度が落ちれば話題にはついていけない。逆を云えば鮮度があるからトレンドを追うのが楽しいのだ。最前線だからこそ誰も知らぬ未知の状態であり、その未知を周りと共有できる楽しさがある。

 まだ見ていない過去の名作は無数にある。昔見た名作も時間をおいて見返すと新たな発見がある。時間は有限だし、名作を見るのはオタク教養にもなる。良作品として保障されていれば効率よくコンテンツを見ていくことができる。世間と話題がずれてもそもそも自分のための趣味なのだから自分が楽しめれば他人は関係ない。自己満足なのだ。

 

私の結論は「トレンドを追う」だ。現役・最前線のアニメオタクであり続ける。

時間を確保し、録画レコーダーに撮りためたアニメを見続ける。常に新しいを追い続ける。過去の名作を追い続けるのは老害のすることだし、私が老害になるためにはまだ経験が足りない。老害も伊達に老害ではないのだ。アニメオタクを自称し続けるために日々研鑽に励み、体力の限りツッパリ続ける。オタクに必要なのは熱量であって視聴作品数でも知識量でもない。そんなことはわかっていても、私は視聴作品数を重視する。それがバケモノ共にならんでアニメオタクを名乗るための矜持だから。

 

PS.「ジャンプ作品しか追わない」ヤツと「バトルものは見るけどロボットアニメは見ない」ヤツとは話が合わん(半ギレ)