岐阜獄中記 ~アキバから岐阜へ~

アキバを離れ、陸の孤島「岐阜」に収監(就職)されたオタクの話

雛見沢は実在する

そこは日本人のDNAに刻まれた原風景がそこにあった。ここに訪れたのは初めてなの

に、都会出身の私には縁も所縁もないはずのこの土地は何故だか懐かしく感じた。そんな幻想風景が目の前に実在していた

 

 投獄されてから1年ほどたったある日、天命が聞こえた。「そうだ、雛見沢へ行こう」

 

 あの作品との出会いは小学生のときである。マンガ版が身内でブームになり、みんなとで回し読みをしていた。今でこそスマホの普及で誰でもグロい映像やR15以上のマンガなんかを検索すればいくらでも出る時代になっているが、当時はそんなものもない。PCも比較的高価なもののため、子供が触る道具ではなかった。だから、マンガ版の描写を見て、「こんなマンガが世に出回っていいのか...」と幼い私には見てはいけない背徳感と高揚感が入り混じっていた。

 

 しかし、ちゃんと中身を全部読んだのは高専に入ってからのことである。星海社で新装版の小説が出たときに全巻購入して読んだ。1%しかたどりつけなかった謎に大声でツッコミを入れたくなる気分にはなったが、それでもあの絶望を乗り切れたときには興奮したものだ。

 

 話は戻って、天命を受けた私は早速車に乗り出発。高速代をケチったので下道4時間。雛見沢は実在していた。観光用に一部整備はされているものの、村として成り立っていた。どこの小道に入っても、THE日本の原風景であり見世物ではない生活感漂うその家々に感動した。アニメ版を見たわけではないので、「ここがあのシーンのやつ」とかはならなかったが、古手神社(白川八幡神社)の倉庫を見たときは写真を撮りまっくった。神社本体じゃなく、脇にある倉庫の写真を撮っている連中は9割オタクである。

 

 後日、出かけた出来事を刑務所の岐阜出身の受刑者に話したとき、事件は起きた。 

 

  私「週末、雛見沢行ってきたんですよね~」

 岐阜出身受刑者「それ、どこ?」

  私「」

 

 事故った。雛見沢は実在する場所であるが、実在しない。頭では分かっていたが、岐阜県民のくせに雛見沢の場所もわからないなんて...

 悔しくて、同期の東京出身の受刑者人に「雛見沢がどこにあるか?」を聞いたが誰も知らなかった。誰も知らなかった。白川郷がどこにあるか知っているのは一般教養なのに、どうして雛見沢がどこに実在するのかは一般教養でないのか。ここに投獄される前のアキバでは、少なくとも私の周りではこれは一般教養であったはずなのに。私はどうして自分がこの監獄に収監されているのかを自覚されられた気分になった。

 

PS.アニメが再リメイクされたのが放送しているので、一般教養を養ってください。刑務所がある東海地区では放送されてないみたいですが...